地図班の紹介

近年,携帯電話は飛躍的に進歩し,高性能,多機能なモバイルデバイスとして確立されつつあります.これに従って,歩行者のためのナビゲーションサービスが提供され始めてきていますが,GPSによる位置測位誤差の問題や,表示用の地図からナビゲーションに必要のない情報を省き,データ量の削減を行う略地図生成の仕方,屋内のようなGPS位置測位が難しく,道だけでなく広場のような空間を有する場所でのナビゲーションも行う必要があります.
このように歩行者ナビゲーションシステムにはまだまだ多くの課題が残されています.地図班ではこのような課題を解決するために各々が広い視野を持ち,アイディアを出し合って研究に励んでいます.

迷いにくい道案内

知らない場所を訪れる時に,地図を使用したナビゲーションシステムを使うことがあります.しかし,歩行者が地図上の情報を読み取れないと,迷ってしまい目的地まで到達できません.本研究室では,「目的地まで到達するために必要な情報とは何か」,「その情報を歩行者に認識してもらうにはどうすれば良いか」を考慮した迷いにくいナビゲーションシステムを研究しています.例えば,曲がり角に見やすいランドマークを表示し,そのランドマークを色付けし丸印で表示することで,「曲がり角」など目的地までのチェックポイントとなるようなランドマークを歩行者が認識しやすくなります.上記のような迷いにくい地図を使用したナビゲーションシステムを,スマートフォンなどに実装し,実用化を目指しています.

迷いにくい道案内

屋外における位置特定

GPSによる現在位置の取得において下図のような測位衛星数の減少(電波が届かない場合),マルチパス(ビルや地面に電波が反射し,正確な測位が出来なくなる状態)の影響により,25m~50m,場合によっては150mもの誤差が生じる場合があります.そのため,その誤差を修正する手法の考案が求められています.私たちは,道路標識を携帯電話カメラで撮影,認識し,地図と道路標識の相関データベースと照合することで位置の修正を行うことができると考え,このシステムの実現に向けた研究を行っています.

屋内における位置特定

屋内ナビゲーション

屋内でのナビゲーションの主な課題はGPSを使うことができない点にあると言われています.一方,ある地点間の経路を探索するためには,モデル化された地図が必要です.屋外空間は道路のネットワーク構造を駆使したグラフモデルを利用できます.しかし,屋内空間は道路が存在せず特殊な構造を持つため,このグラフを利用できません.可視グラフは障害物の各頂点にノードを置き,ノードから障害物を挟まない枝をリンクとするグラフモデルであり,屋内空間に対応できます.本研究室では可視グラフを用いた屋内環境で利用できるナビゲーションシステムについて研究しています.

屋内ナビゲーション

屋内における位置特定

屋外空間での位置測位には一般的にGPSが利用されています.しかしながら,屋内空間ではGPSの信号が遮断されてしまうため極端に位置測位精度が低下してしまいます.GPSの他にも,無線LANを利用しアクセスポイントとの距離から位置測位をする方法がありますが,あらかじめアクセスポイントの設置位置を把握しなければならないという欠点があります.そこで,他の設備に頼らない位置測位方法としてPDRがあります.PDRは加速度センサ・地磁気センサ・ジャイロセンサを利用し,基準とする位置からの移動量を算出することで位置測位をします.近年のセンサ技術の向上によりセンサは小型化され,多くのモバイル端末にはこれらの複数のセンサが搭載されており,モバイル端末を利用することで屋内にいる歩行者の位置測位が可能になりつつあります.本研究室では屋内空間での歩行者向けナビゲーションシステムを実現するための位置測位方法としてPDRを研究しています.

PDRによる位置特定

略地図生成

携帯電話で地図を表示すると,表示画面が小さいために視認性の悪い地図が表示されるという問題があります.この問題を解決する方法のひとつに略地図生成があります.略地図とは地理情報の中から余分な情報を取り除いて簡略化した地図です.余分なものを無くすことで,ユーザが地理情報を理解しやすくなります.略地図の多くはデザイナによって手作業で作成されています.本研究室では略地図の自動生成手法について研究し,視認性の良い略地図生成手法の提案を目指しています.

略地図生成