アプリケーション・システム設計班の紹介

Cベース設計

LSIの集積度は年々指数関数的に増加していますが,設計者一人一人の能力には限界があるため,設計規模の増大に設計能力が追いつかないという状況が生じます.この設計生産性の危機を打開するための有効なアプローチのひとつに,設計の抽象度を上げるという方法があります.つまり,人間にとってより分かりやすく,記述量も少なくなるようなプログラミング言語で回路を設計できるようにするということです.

「高位合成(または動作合成)」とは,ある処理を実行する専用ハードウェアを設計する際に,対象となる処理のアルゴリズムを直接的に記述した「動作記述」から,レジスタやクロックによる同期などハードウェアに特有の概念を意識した「RTL(Register Transfer Level)記述」を自動的に合成する処理のことを意味します.

'90年代では人手でRTL設計することが主流でしたが,動作記述で設計することができれば,RTL設計に比べて設計記述の量は大幅に減少し,設計ミスも少なくなり,設計生産性が飛躍的に向上します.また,アプリケーションの種類や自動合成時の制約によっては,人手によるRTL設計では設計不可能だった複雑な回路を生成できる場合もあります.採用できるアーキテクチャの可能性を広げられるというのも,高位合成の大きな利点です.近い将来のLSI設計において,高位合成技術が重要な役割を果たすことは間違いありません(NECの高位合成システムCyberなど,既に一部では実用化されています).

高位合成に関する基礎的な理論は既に確立し,実用段階に入ろうとしていますが,高位合成を使って得られる回路は性能や面積,消費電力などの面で手設計に及ばないというのが現状です.古典的な高位合成手法では,演算器などのモジュールの配置や論理合成など,他の工程に対する考慮が足りなかったということが,その原因の一つです.特に,設計規模の増大やプロセスの微細化の進行により,制御回路部の遅延や配線遅延が回路の性能に及ぼす影響が大きくなっています.従って,高位合成の段階から最終的に生成される回路を意識することがますます重要になってくると考えられます.

現在行っている研 究

このような背景から,高位合成班では現在,
・フロアプラン(モジュールの配置関係)を考慮した高位合成
・論理合成を考慮した高位合成等,下位工程を高位合成の段階から考慮する手法についての研究に取り組んでいます.